ガツン、ガツン……。
公園の草むらの中から鈍い音が聞こえる。

背中を丸め、トライアングル職人・北山靖議は金槌を打ち付ける。

トライアングルとなる金属棒の表面に凹凸をつけているのだ。これが独特な響きを生むという。




この後、棒を折り曲げて三角形にする。





完成品を叩いて鳴らすと、皆が驚く。
「めちゃくちゃいろんな音が混ざって聞こえる!」
以前あるTV番組が、北山トライアングルを取材して音の波長を調べた。結果、いくつもの不規則な周波数の音が含まれると判明。つまり、川のせせらぎや風の音、ハスキーボイスの歌声と同じ特徴を持つということだ。人はこれらを本能的に、整った音とは違う、味のある音と感じる。


北山製はどこかアジア的で、神聖な儀式に使われる鐘のような音色。今、この個性的な楽器を世界中のミュージシャンが買い求めているという。
製作のきっかけは5年前。あるトライアングルの銘器に出会った。鳴らしてみたとき、「これ作れる。作ってみよう」と直感。思い付くと即行動してしまう彼は、全くの独学で製作をはじめる。

試作品は数百本。しかも模倣品ではなく、それを超えるオリジナルを目指すようになる。

しかし、一向に理想の音にならず、苦悩する日々が続いた。
のめりこむと妥協ができない性分は、コーヒー店を営む父親譲りだった。

こだわりの一杯を集中して味わってほしい。だから、父は店内での会話、勉強、読書、携帯電話を一切禁止にした。かつて、世間の認識と自分の信念のズレに苦しみ、やむなくそうしたのだ。

器用に立ち回るのが苦手。
ただ、自分に正直になって、気持ちよく仕事がしたいだけ。


もしかしたら他人は「たかがコーヒー」「たかがトライアングル」と思うかもしれない。でも、「古今東西を超えて最高のものを届けたい。」父と子は、そう願い続ける。


人間の心の奥底に向かって直接訴えかける響きを作りたい。そうやって正真正銘のオリジナル品を生み出した。

ストイックさの果てにたどり着いた、自分だけの仕事。
彼の生き様と作品に触れると、ピンと背筋の伸びる思いがする。北山トライアングルにはそんな力がこもっている。

北山トライアングルwebサイト
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